漢養舎ブログ

「漢養舎の本棚」「出直し!漢字学習」「思い出のひきだし」「自由のぉと」

暗:教育&常用漢字、漢検8級


この漢字は、明るい/暗い、の「くらーい」を基本義として覚え、派生的に、「そらーんじる」(書いたものを見ないですむようにすっかり覚える)という意味と読みを覚えておけば、熟語の意味はだいたい想像できる。

ただ、やはり、「?」という熟語もあるので、整理しておきたい。

・暗渠(あんきょ):水面が見えないようにふたをしたり地下に作ったりした水路。

・暗合(あんごう):思いがけなく一致すること。偶然の一致。
          *暗号と間違えないように!

・暗澹(あんたん):①将来の見通しが立たず、絶望的なさま。
          ②くらくて恐ろしげなさま。「ーたる海の色」

・暗涙(あんるい):誰にもわからないようにこっそりと流す涙。
          また、心の中で泣くこと。「ーにむせぶ」

・暗対(あんたい):何も見ないで答える。

・溶暗(ようあん):映画・演劇・テレビなどで、一つの場面が徐々に暗くなって
          消えていくこと。フェードアウト。
          *対義語:溶明(ようめい)=フェードイン

・暗暗裏、暗暗裡(あんあんり):誰にも気付かれずに。こっそり。「ーに事を運ぶ」

・不欺暗室(あんしつをあざむかず):人の見ていない所でも身をつつしむたとえ。

 

では、なぜ、「日+音」で、「くらーい」という意味になるのか? 

それを理解するには、「言」と「音」の関係を知る必要があった。

二つの漢字の古い字形はほとんど同じで、

「言」は、「辛+口」

「音」は、「辛+口」の「口」の中に「一」を加えたもの。

『字統』によると、

「口」は身体の「口(くち)」ではなく、祭りのとき、神に申し上げる言葉である祝詞(のりと)などを入れる器とし、神への誓いを表すとしている。

「辛」は、体に入れ墨をするときの針のことで、

「言」は神への誓いが破られた場合、罰を受けるという約束を表しているとのこと。

そのため、「言」には、

はっきりと、ものを言う

という意味が含まれている。

一方、

「音」というのは、神に告げ祈り、または誓ったとき、それに対する神の反応のこと。

それは、はっきりとした言葉ではないことから、

はっきりとしない、ぼんやりとした暗示

というような意味合いを持つようである。

「はっきりしない」「ぼんやり」に「日」が添えられて、

「暗い」

となったのではないかと考える。

「音」というと、「音楽」の「音」であったり、「物音」が頭に浮かぶが、それは元の意味合いから派生したものであると理解すれば、「日+音=暗」も納得できる。

 

「言」と「音」は、同じような成り立ちであるならば、ではなぜ、漢字の上の部分が違っているのか?

「音」の上部は、「辛」の省略形と考えていいかと思う。一方、

「言」の上部は、「心」の変形、デザイン化、ではないかと思う。

『字統』によると、「言は心の声である、と説明してある辞書もあるが、その元となる字形を証明するものはない」とのこと。

証明するものはなくても、言の上部をよくよく眺めていると、心に見えてくる。漢字の字形を整え、その意味の区別をはっきりさせるために、変化・工夫されてきたように思えるし、音に含まれる「一」もそのためだと思う。

案:教育&常用漢字、漢検7級


案内、提案、立案、などと、音読みの熟語は思い浮かぶが、訓読みが出てこない。

訓読みはというと、

・案える→かんがえる
・案→つくえ

答案は答えを考えることだから、確かに「かんがえる」かあ、と、納得。一方、つくえというのがわからない。

『字統』によると、「つくえ」と言っても、学習机のことではなく、食べ物や料理をのせるもののことで、足のあるものを「案」、ないものを「槃(ハン)」と言うそうである。

のちに、いわゆる、「机(つくえ)」のことを意味するようになり、そこから「かんがえる」という意味も表すようになったのだろう。

では、なぜ、「案」が「つくえ」なのか? まず、3つの辞書をみてみた。

・『漢字源 改訂第五版』
会意兼形声。安は「宀(やね)+女」の会意文字で、女性を家に落ち着けたさまをあらわす。案は「木+(音符)安」で、その上にひじをのせておさえる木のつくえ。
・『新漢語林 第二版』
形声。木+安。音符の安は、安定するの意味。安定したつくえの意味を表す。
・『角川新字源 改訂新版』
形声。木と、音符安(アン)とから成る。「つくえ」の意を表す。借りて「かんがえる」意に用いる。

う~ん、まったく納得できない・・・<苦笑>

なので、自分なりに考えることにする。

まず、「木」は、木製の何かを意味するものだろうということ。

次に、「安」は、女性が家にいる姿であることから、家で料理を作ったりと、家事をしている様子とも、捉えることができる。

このことから、

・料理を作って、その作ったものを木製の台に載せることを意味し、その台のことを表すようになったのではないか、

と思う。

 

「案」は「桉」とも書くようで、『講談社新大字典』では同字としている。

では、なぜ、横にあった木を下に書くようになったのか?

デザイン的なものなのかもしれないが、もしかしたら、家の屋根を意味する「宀(ベン)」の中に収めたかったのかもしれない。そう思ってみてみると、「桉」よりも「案」のほうがしっくりくるように思えてくる。

 

「案」を含む以下の熟語、四字熟語の意味、類義語に注意したい。

・案行(アンコウ):①調べてまわる。巡察。②隊列を整える。

・案頭(アントウ):つくえの上。

・案比(アンピ):人口調査をする。戸口調査(ココウチョウサ)。

・玉案(ギョクアン):玉でかざったつくえ。りっぱなつくえ。他人のつくえの敬称。

・方案(ホウアン):①もくろみ。計画 ②医師の診断書。

・鉄案(テツアン):動かすことのできない意見。

・蛍窓雪案(ケイソウセツアン):苦労して勉学に励むこと。*1

・挙案斉眉(キョアンセイビ):夫婦の間に礼儀がいきとどいていること。*2

*1:「蛍窓」は、蛍の光で明るい窓のこと。「案」は机で、「雪案」は雪明かりで机の上が明るいこと。貧乏なので灯油代わりに蛍の光や雪明かりを利用してまで勉学にはげむという意から。『学研四字熟語辞典』

*2:「案」はお膳・お椀のことで、「挙案」はお膳をささげる意。「斉」は等しい意で、「斉眉」は眉(まゆ)に等しい高さをいう。お膳を恭(うやうや)しく眉の高さまでささげるさまをいう。『漢検四字熟語辞典』
夫婦がお互い礼をもって接し、尊敬し愛し合う姿を賞賛する言葉として用いられる。
夫の名は梁鴻(りょうこう)であることから、「鴻案」も同じ意味を表す。

類義語問題で出るかも?

 「鴻案」=「斉眉」

その他、変わった熟語では、

・人命案(ジンメイアン):[俗語]殺人事件

たぶん、出題されないとは思うが、、、念のため<笑>