漢養舎ブログ

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圧:教育&常用漢字、漢検6級


小学5年で習う漢字なので、簡単に考えていたら、けっこう難しい。

普通、音読みは「あつ」だが、

圧状」は「おうじょう」と読む。意味は、
・強制して書かせた文書。人に圧力をかけて書かせた書状。『漢検漢字辞典』

ネットで調べると、「あつじょう、えんじょう、おさえじょう」とも読むようなので、読みの問題としては出ないかもしれないが、「おうじょう」を漢字で書く問題は出るかもしれないので、要注意。

また、意味が派生し、
・無理におしつけて、承知させること。また、無理に承知させられること。
 『精選版 日本国語大辞典
となると、当て字で「往生」と書くこともあるようだ。いずれにしても、この2つの意味を覚えておくこと。

訓読みにも注意が必要。

・「へす」→「圧す」:①力を加える。強く押しつける。 ②圧倒する。
・「へしおる」→「圧し折る」:①強く押しつけて折る。 ②勢いをくじく。屈服させる。

普段は「へし折る」と書くと思うが、「圧し折る」と書いたほうが意味は伝わりやすいかも。

熟語で間違えないようにしたいのは、「あっかん」。これは、

・「圧巻」(*巻は、書物や文書、答案の意味。)

①最もすぐれた詩文。昔、科挙(官吏登用試験)で、最優等の及第者の答案を他の
 及第者の答案の上に載せたことから。
②催し物や書物などの、内容や場面のいちばんすぐれているところ。
『漢字源 改訂第五版』

それから、『角川新辞源』におもしろい三文字熟語を見つけた。

・「圧酒嚢(あっしゅのう)」。意味は、

酒を搾(しぼ)る袋。転じて、労金

と、あった。調べてみると、中国の蘇軾(そしょく)という人の詩の中にこの圧酒嚢が出てくるが、そこでは、給料代わりにもらったもの、という感じ。いずれにしても、なんらかの形式で試験に出そうな予感。

 

圧の成り立ちについてみてみると、この漢字の元の漢字は、

・「」。大きく分けると、「厭+土」。猒が省略されて、今は「圧」。

厭は、「厂+猒」。

「厂」の音読みは「カン」、訓読みは「がけ」。「がんだれ」という部首名で覚えていたので、音訓は知らなかった。

「厂」は象形文字で、切り立った、削り取られたがけを表している。

「猒」の音読みは「エン」、訓読みは「あ―きる,いと―う,やす―んじる」。
『漢字源 改訂第五版』。

『字統』によると、「猒」の左側の上部は、肩の骨の部分を表しているとのこと。下部は肉を表しているので、猒は犬の肩の肉、というような意味。

「土」は象形文字。土を盛った姿を描いたもの。古代人は土に万物をうみ出す充実した力があると認めて土をまつった。このことから、土は充実した意味を含む。また、土の字は、社の原字であり、やがて土地の神や氏神の意となる。『漢字源 改訂第五版』

以上のことを頭に入れ、『字統』の解説をもとにして整理してみると、

崖下の聖所に神様を祭り、犬の肉を供えて祈り、災いなどを押さえ込む「圧」という漢字ができた、ということだろうと思う。

以上で、圧については、整理できたが、自分としては、どうして崖下という場所なのか、疑問に思った。それで、再度、『字統』をよくよく見てみると、

「猒」は「厭」という漢字の最初の形、とある。

そこで、「肩」という漢字の古い字形をみてみると、

「厭」=「肩+犬」、というふうに見えないこともない。

本当のところはわからないが、こうやって漢字を眺めていると、なんだか楽しくなってくる、のは自分だけだろうか<笑>

 

渥:漢検準1級


右側の「屋」につられて、「オク」と読んでしまいそうだが、音読みは「アク」。
訓読みは、「あつーい」「うるおーい」。

意味は、
①厚(あつ)い。手厚い。
②うるおう(霑(テン)・濡(ジュ))。濡(ぬ)れる。うるおす。浸(ひた)す。
 漬(つ)ける。 
③うるおい。艶(つや)。光沢。美しい。つやがあって美しい。 
④濃(こ)い。
⑤恵( めぐ)み。恩恵。 *『新漢語林 第二版』より抜粋。

熟語は、
・渥然(あくぜん):つやつやと光沢のあるさま。
・渥丹(あくたん):濃い赤色。
・優渥(ゆうあく):天子の恵が手厚いこと。
など。

渥は、「水+屋」。ここで問題となるのは、「屋」。

屋は、「尸+至」。

「尸」は、亡くなった人が手足を伸ばして横になっている象形文字。音読みは、「シ」で、訓読みは、「しかばね、かたしろ」などと読む。

「至」は、「矢」が逆さまになった形と「一」で、「一」はこの場合、数字ではなく、矢の到達点・線を表しているとのこと。矢が飛んでいって、地面に突き刺さった形で、会意文字あるいは指事文字。「至(いた)る」と訓読みし、ある場所や状態に行き着く、到達するというような意味。

『字統』によると、重要な建物を建てるときは占(うらな)いをし、矢を飛ばして、その矢の到達したところを選んでいたとのこと。でも、矢を飛ばす向きはどうやって決めるのか?、などと、占い方がよくわからない。勝手な想像だが、
・矢を飛ばし、矢の到達した場所が良いのか悪いのかの吉凶をなんらかの占いの
 方法で占った。
と解釈すると、納得できる。

いずれにしても、亡くなった人が人生の最期を迎え、至る場所が「屋」なのではないかと思う。そう考えて、屋の意味をみてみると、
①いえ(家)。すみか(住処、栖)。
②やね(屋根)
③おおい(覆い)。屋根のように物をおおう物。『新漢語林 第二版』を参考。

『字統』によると、「屋は殯(*かりもがり)の建物をいう字である」とのこと。
(*亡くなった人を埋葬(まいそう)する前に、しばらく安置すること。)

これで、「屋」については理解できた。

では、なぜ、「屋」に「水」で、「うるおう」なのか? 手持ちの辞書の解説を読んでもなかなか腑に落ちない。それで、自分なりに考えてみた。

水は、雨や涙を表しているのではないか。

亡くなった人が安置されているところに降る雨。それはその死を悲しむ人たちの涙なのかもしれない。その人々の思いが亡くなった人に伝わり、心潤う。

こんなことを考えていたら、ひとつの言葉が目に留まった。

一雨潤千山

一雨千山を潤す(いちうせんざんをうるおす)。ひと雨だけでも、多くの山々をうるおす、という意味で、お釈迦様の教えに例えた言葉とのこと。

そして、この「渥」という漢字を目にして、真っ先に思い浮かんだのは、

渥美 清さん。「男はつらいよ」の寅さん。

つやがあって、美しく、そして、心に汚れがなくすがすがしい。

いい名前だな~。